七草粥を食べたことはあっただろうか。あの時期、お粥にして胃を休めるのは得策だ。

年末年始は例年、御馳走続きで内臓を酷使するのがお決まりだ。だが、今年は慎ましやかな正月を過ごし、例年とは打って変わって健やかに新たな年をスタートすることができた。とはいえ、相も変わらず今月のある日も、少々の胃痛に苦しめられていた。胃の具合が優れない時期をほぼ毎月決まって通り過ぎることになるのは、ホルモンバランスが崩れることが原因のようだ。ホルモンが安定しているはずの期間にも胃の不調が現れることがあるのは、単に暴飲暴食が原因だ。吞兵衛のうえに食い意地がはっている自分が恥ずかしい。
胃腸が弱いことが長年の悩みだった。過敏性腸症候群からは何とか脱した。これに苦しめられた数年間は、今とは比べ物にならないくらい深刻に悩んでいた。今は深刻さはない。嫌気がさしている。単に食べ過ぎ飲み過ぎをセーブすれば、胃の不調は回避できる。ホルモンがアンバランスな日も同様だ。それなのに、それができない。分かっちゃいるけどやめられない、というやつだ。嫌になる。
まず、アルコールに依存している。「飲む人?」と人に聞かれれば、「嗜み程度に」とついつい聞こえ良く言ってしまう。量はそんなにも多くはないのだが、毎日欠かさず飲みたいとなれば明らかに嗜みを超えて依存していると言わざるを得ない。「依存してます」とは言いにくい。

夕刻の私はアルコールに頼り切っている。お酒を飲むと、気血が巡る。体が楽になり、食欲が増し、食事を美味しくいただける。元気を回復し、夕方からの時間を乗り切れるのだ。アルコールが私の一番の滋養強壮剤となってしまっている。
昨晩珍しくアルコールを抜いた。すると、体の痛みがいつも以上に気になってしまった。なるほど、この痛みを和らげるためにアルコールが必要なのだと、改めて納得させられた。だから、アルコールは私にとって必需品なのだという言い訳を作りたいわけではない。
次に、甘いもの依存だ。毎晩スイーツを食べないと気が済まない。私にとっては赤ワインのあてでもある。ここ最近、おからケーキが定番となっている。手作りだから安心だと言っては、おかわりする。すぐになくなるので、頻繁に焼いている。せっせと作り、せっせと食べる。

アルコールと甘いもの依存から抜け出そうとはあまり考えてはいない。もう完全に乗っ取られている証拠だ。とはいえ、ときどきはアルコールも甘いものも抜きたいと強く思う。それで先日実行したのが、大根断食と私が呼ぶ、食養生だ。
日頃酷使してしまっている胃や肝臓、膵臓といった内臓を労わりたい。私にも無理なくできる方法を考えた。以前夫と、断食を二度ほど試したことがある。私にとっては胃痛に苦しめられた苦い経験であったが、断食明けに行う梅流しは違った。煮た大根を潰した梅干しと食べることで腸内の宿便を出すデトックス法だ。そこまでのデトックス効果は正直得られなかったのだが、この大根と煮汁がとにかく美味く、私たち夫婦を虜にした。

あの梅大根をまた食べたいとずっと思っていた。だが、普段の食事にはどうも向かない。夫のごはんのお供にも私のお酒のあてにも、味が淡白すぎて向かない。その前に、他に何もないからこそあの梅大根はとびきり美味しく食べれるのであって、他の料理と一緒では本来の美味しさを発揮できないだろう。作る機会は一向にやってはこなかった。
そんな梅大根こそが救世主だったのだ。何を食べてもお酒を飲みたくなってしまう性分の私が、唯一お酒を欲しない食べ物、それが梅大根だった。お酒を飲んで胃を活発にし、食事だけでは飽き足らず、甘いものは別腹だとさらに食べて飲んでこれでもかという満腹感、満足感を得ることに嗜癖する私だが、お酒を飲まなければ食べ過ぎず、甘いものも欲しないという不思議な傾向がある。梅大根だけ食べていれば、お酒を欲しず、甘いものも欲しない。梅大根は、私を依存症から一時だけでも解放してくれる最高の薬なのだ。結果、内臓を休めることができる。

うれしいことはそれだけではない。調理時間が極端に短縮される。使う調理器具は、鍋と包丁とまな板だけだ。水と昆布と大根を鍋に入れてストーブの上に放置するだけで出来上がりなのだから、これ以上に楽な食事の支度はない。普段はお酒を飲みながらゆっくり夕食を楽しんだうえにデザートもありで、食事時間が長くなるが、梅大根だけの食事ではそんなにも時間はいらない。洗う食器ももちろん最小限。食器洗い担当の夫も楽できる。とにかく、時短で楽だということ。さらに、食後のお腹が落ち着くまでの時間はいつもよりもぐんと短く、早くお風呂に入ることができ、早く就寝することもできた。睡眠時間はいつもと変わらなかったが、いつも以上にたくさん眠れた満足感とともに気分よく目覚めることができた。
少なからずこの一晩だけは、暴飲暴食、アルコールと甘いもの依存を克服できた。内臓を休められた実感もある。メリットが多いうえに無理がない。一食を梅大根に置き換えるだけで、断食するわけではない。であれば、大根断食というネーミングは明らかに間違っているが、断食という響きが何故か夫のやる気に火をつけるので、これでよし。こんなにもいいものなら今後も定期的にやるしかない。一月に一回の提案に夫が同意してくれたので、とりあえず一か月に一回ペースで続けていこうと考えている。



